欠伸軽便鉄道通信162024年02月11日 06:00

少し小さめの庭園鉄道(連載第16回)

 庭園鉄道の主流は、5インチゲージのように人が乗れるものではなく、30分の1~12分の1くらいのスケールで、線路幅は32~64mmくらいの小さなものが多いようです。車両を自作するにも手頃なサイズといえ、電気機関車ならば、モータ、電池、ギアボックス、スイッチなどを2000円くらいで揃えれば自作できます。大きい分、精度が多少低くても大丈夫です。軽便鉄道であれば、ぐらぐら揺れながら走る姿も楽しいことでしょう。
 一番人気があるのは、Gゲージ(45mmゲージ)と呼ばれるサイズの製品です。アメリカやヨーロッパでは、このサイズの庭園鉄道の専門雑誌が数種類も発行されるほど、多くの人たちが楽しんでいます。
 ドイツ、レーマン社のLGBというシリーズが有名で、この線路が一番入手が簡単です。カーブの最小半径は60cm。HOゲージやNゲージと比べても、広いスペースを必要としません。ただ、大型車両を走らせたい人は、半径3mくらいは必要になります。
 このサイズの庭園鉄道は、大きく分けて2種類あります。
 1つは、情景を重視し、レイアウトの雰囲気を楽しむもの。四季折々の風景が展開する庭園鉄道では、実物の植物が利用でき、川や滝に本物の水を流すことも可能です。地面に近いところに線路を設置するグラウンド・レベルと呼ばれるレイアウトが一般的です(図1、写真1、2、3)。
 もう1つは、車両の製作や運転を楽しみたい場合の屋外運転場です。この場合、ある程度高い位置に線路を設置し、走行する車両に人がついて歩いて操作をします。カーブも緩やかにして、フリー走行させることも多いようです(図2、写真4、5)。
 普通の鉄道模型のように線路から集電する方法もありますが、庭園鉄道では、機関車にバッテリィを搭載してフリーに走らせるか、ラジコンで運転するようにすること多く、線路の状況によってスピードを調節します(図3)。線路から集電しないため、屋外に線路が出しっぱなしでも接触不調の心配はありません。
 もちろん、模型用エンジンや蒸気エンジンで走る機関車ならば、バッテリィも必要ありません。排気ガスの問題から、屋外で走らせるのに適しています(写真6、7)。
 日本は雨が多く、夏は暑すぎるので、庭園鉄道を楽しむ人が少ないのでしょうか。ガーデニング的な楽しみもあり、広い範囲の方が楽しめる趣味だと思います。

写真1 小さな庭園鉄道: 庭の片隅に作ったGゲージのレイアウト(スペース約90×150cm)を走行する蒸気機関車(石炭が燃料のライブスチーム)

写真2 小さな庭園鉄道: 同じレイアウトを走る7/8インチスケールの機関車(ラジコンでスピードを制御)

写真3 小さな機関車: ディーゼル機関車のスタイルだが、実はアルコールで走る蒸気機関車。火を使うので室内では運転できない。

写真4 高架のレイアウト: 手前が45mmと32mmゲージの高架レイアウト。走行しているのは7/8インチスケール(約13分の1スケール)の列車。奥に見えるのは5インチゲージの列車

写真5 高架のレイアウト: 大型ガーラットが牽引する列車。高架レイアウトは、このような長い編成の列車をダイナミックに走らせる運転に向いている。

写真6 Gゲージの特急列車: Gゲージの製品を、模型エンジンで走行するように改造したもの。

写真7 エンジンで発電: その内部。ラジコン飛行機のエンジンで発電し、その電気でモータを駆動する。走行はフリー。

図1 地面レベルのレイアウト: 情景を作り込みたい場合に向いている。樹木は実物の低木、草原は苔などを用いる。ストラクチャはすべて風雨や太陽光に耐えるものとする。地面より少し高くして、水捌けの良い場所に設置する。
図2 高架レベルのレイアウト: 機関車の製作、運転を楽しみたい人に向いている。立った姿勢のまま車両を操作できる。できるだけカーブ半径を大きくして、大型の編成を豪快に走らせることが多い。
図3 線路状況による影響: フリー走行させる場合には、急カーブでの減速や脱線に注意する。急カーブや勾配のあるレイアウトでは、ラジコンで機関車を操縦することが望ましい。