欠伸軽便鉄道通信17 ― 2024年02月25日 06:00
ジャイロモノレール(連載第17回)
ジャイロモノレールというのは、1本のレールの上で自動的にバランスを取りながら走る鉄道車両です。100年以上まえにイギリスで発明されました。センサやコンピュータがない時代ですから、モータと歯車とスイッチだけで成立しているメカニズムです。
当時、鉄道の高速化が期待されていましたが、2本のレールでは、カーブで左右の車輪の差動が生じることが問題でした。そのため、レールが1本のモノレールが、未来の乗り物として注目され始めたのです。
一般的なモノレールは、上部のレールにぶら下がるか、太いレールの上に跨がるか、のいずれかです。これらは線路建設に多額の費用がかかることが問題でした。通常のレール1本の上を走るジャイロモノレールは、その問題を解決する新技術として注目されました。
発明したルイス・ブレナンは、実際に30人乗りのジャイロモノレールを試作し、博覧会などでデモンストレーションを行いました。しかし、第一次世界大戦になり、新しい鉄道を実現する余裕はなくなってしまい、ジャイロモノレールは歴史に埋もれてしまったのです。
欠伸軽便鉄道では、総力を上げて(といっても僕一人しかいませんが)古い特許などの資料や図面から原理を調べ、実験を重ねて、2009年にジャイロモノレールの模型を作ることに成功しました(写真1~4)。
試作9号機が走行するシーンをYouTubeにアップしたところ、世界中から大きな反響がありました。チャレンジした人は何人もいましたが、それまで成功した人が一人もいなかったからです。
ジャイロモノレールを作るためには、理屈を完全に理解していることと、少々高い工作力が必要です。さらに、機械の調整が難しいため、途中で諦めてしまう人が多かったのです(図1)。
ジャイロモノレールは、1本のロープを渡ることもできます。また、遠心力や横風に対してもバランスを取ります(図2)。脱線しても倒れません。実機では、ジャイロを真空容器の中で回すため、たとえ電源が切れても1時間も回転し続けます。ジャイロを止めるときは、左右に補助脚を出して、支える機構を備わっています。
僕のHPに、ジャイロモノレールの作り方の記事があります(無料)。興味のある人は是非チャレンジしてみて下さい(「ジャイロモノレール研究所」)。
ところで皆さんは、回転しているコマがどうして倒れないのか、自転車は何故倒れずに走れるのか、きちんと説明ができますか?(図3、4)
写真1 ジャイロモノレール7号機: 図1の構造に近い試作機。工事現場で使うライトの笠を前後に利用して製作。
写真2 ジャイロモノレール9号機: ジャイロを2機搭載し、高速走行が可能。最初にYouTubeに動画をアップした試作機。
写真3 ジャイロモノレール11号機: さらに高速走行が可能なモデル。やはりジャイロ2機を搭載。
写真4 ジャイロモノレール12号機: 中型の試作機。庭園鉄道の5インチゲージの線路の片方だけを使って走行。左右に引込み脚を装備している。
追伸 春が来た: 3月の写真。冬の間は土が凍ってしまうため工事ができなかった。
図1 ジャイロモノレールの構造: 走行用モータとジャイロを回すモータがあり、さらにジャイロを傾斜させるサーボモータも必要。サーボモータは、ジャイロのジンバルの傾きによって力の向きを切り換える。
図2 ジャイロモノレールは作用力の反対方向へ傾く: カーブでは外側へ遠心力がかかり、ジャイロモノレールは内側へ傾いてバランスを取る。中に乗っている人は、横方向の力を感じない。
図3 コマは何故倒れないのか?: 「回転しているから」は言葉だけの理由で、「コマだから」と同じく、理由にはならない。本当の理由は、ここには書ききれないが、軸の先(床に接する箇所)が、回転と傾きによって移動することに注目してみよう。
図4 自転車はレール上を走れない:自転車が倒れない理由は「走っているから」ではなく、左右に進路を変えられるから。レール上では進路が自由にならないため、走っても、すぐに倒れてしまう。
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