欠伸軽便鉄道通信332024年10月06日 06:00

どのゲージにするか問題(連載第33回)

 「ゲージ」とは、左右のレール間の距離のことで、日本語では「軌間」といいます。レールの中心間距離ではなく、内のりです。鉄道模型は、ゲージによって車両のだいたいのサイズが決まります。日本で最も多くの人が楽しんでいるNゲージは9mmゲージで、これよりひとまわり大きいHOゲージは、16.5mmゲージです。
 庭園鉄道で人が乗って運転を楽しむサイズは、3.5インチ(89mm)か5インチ(127mm)か7.5インチ(190.5mm)ゲージが一般的です(ただし、5インチクラスはアメリカでは4.75インチが多く、7.5インチクラスはイギリスでは7.25インチが大半になり、国によって微妙に違う)。ゲージが異なると、その線路を走らせることができません。車輪や車軸は、線路のゲージに適合するように作られています。大型の模型では簡単にゲージを変更することは困難です。
 庭園鉄道として屋外で楽しむ32mmゲージや45mmゲージの場合は、車輪を少しずらして車軸に固定し直すことで、ゲージの違う線路に対応できるものがありますが、ごく一部といえます。
 したがって、自分の鉄道を建設するときに一番考えなければならないのは、どのゲージにするのか、という問題です。そのゲージで車両が増えると、別のゲージに変更することが難しくなります。不自由なことですが、実物はもちろん模型でも、これが鉄道の宿命といっても良いでしょう(図1、写真1~4)。
 自分だけで楽しむなら、ゲージは自由に決められます。半端な数ではなく、5cmとか10cmでも良いわけです。しかし、友達と一緒に走らせたり、どこかの運転場へ自分の車両を持ち込んで走らせるなら、既に普及しているゲージにした方が断然有利ですし、既製品の各種のパーツも利用できます。
 どんな種類の車両を走らせたいかによっても、選ぶゲージが違ってきます。実機が大型で長い編成を楽しみたいのなら、模型はできるだけ小さい方が有利で、ゲージも1ランク小さくすると良いでしょう。逆に、小型の車両が好きな人は、模型は大きく作って楽しむことができます。大きいほど工作は簡単ですし、大きいからといって、比例して費用がかかるわけでもありません。小型機は小回りが利くものが多く、ゲージが大きくても、結果的に狭い場所で走らせることができます(図2)。
 実物そっくりの模型(スケールモデル)を作りたい人は、ゲージが決定すると縮尺が決まり、実物のゲージと模型のゲージの比が、スケールダウンする縮尺率となります。作りたい模型がどれくらいの大きさになるのか、想像してみましょう。

図1 鉄道模型の主なゲージ: 小さい模型は室内で楽しむのが一般的。屋外に線路を敷く場合は、ある程度の大きさが必要。さらに大きいものでは、自分が乗って運転を楽しむことができる。
図2 大型機か小型機か、どちらが好き?: 走らせたい車両によって製作するサイズ、取扱い方法が違ってくる。大型機や長編成が好みなら小さいスケールに、小型機なら大きいスケールで楽しむのが一般的。

写真1 ゲージが大きい方が小さい場合もある: 写真の左は45mmゲージの1番スケール(32分の1スケール)。右は32mmゲージの16mmスケール(イギリスで多い19分の1スケール)。このように、ゲージの大きさと模型の大きさが逆転することもある。

写真2 運転して楽しめるサイズの機関車: 左は5インチゲージ、右は3.5インチゲージ。左は欠伸軽便最新の38号機のコッペル。右は、記念すべき最初のライブスチームで、OS社製のクラウス(キットで製作)。

写真3 同じ5インチゲージでもサイズは違う:左のハイスラは12分の1スケール。右のジャックは4分の1スケール。実機のゲージが違うため、同じ線路に乗るように縮尺すると大きさが逆転してしまう(実機のジャックは非常に小型)。

写真4 左のレールカーは、人が車内に乗り込んで運転できるサイズで製作した。5インチゲージとしては限界に近い大きさ。

追伸: 製作中の39号機。ボディがほぼ完成して、これから塗装を行う予定。

コメント

_ をかへま ― 2024年10月06日 06:44

図1の「屋内で楽しむ鉄道模型」でつついておられるのは
パンタグラフかな?と解釈しているところです。

寫眞4でピカソが「限界に近い大きさ」と言われると
なんか嬉しいです(僕が)。

39號機・ガスメカニカルが何色に塗られたのか、
「弁天ヶ丘線の在籍車両のご紹介」へ見に行ってびっくりしています。

_ マリマ ― 2024年10月06日 08:06

欠伸鉄道の最初の機関車はどんな感じなのだろうと思っていたので、写真2で見ることができ感動しています。
39号機はどんな色で仕上がるのか、お披露目される日が待ち遠しいです!

_ 香 ― 2024年10月06日 10:46

大きなものは小さく、小さなものは大きくした方が楽しめるとは面白いです。

図1の模型を楽しむイラストかわいいです。

_ KATO Masaya ― 2024年10月06日 20:09

自分がどのように遊びたいのか、ということがシンプルだけど重要そうですw

_ 三篠(みすず) ― 2024年10月06日 20:36

実機に近い形態を狙うか、オリジナルデザインやデフォルメも含めて実機にとらわれないで楽しむか、というのもスケール選択の指標になりそうですね。それにしても図2の小型機の「5インチゲージでも半径3mm」は無理が汗

_ ネム ― 2024年10月06日 21:30

イラストがとても可愛いですね。
ゲージ問題は、一番最初の難関ですね。
すごく悩みそうです。
ところで、犬のハウスは、ケージと呼びますよね。
でも、犬のハウスをゲージと呼ぶ人がたくさんいて
どうしてかな?と思っていたのですが、ここから
きているのかもしれませんね、と気がつきました。

_ うみひろし ― 2024年10月07日 07:31

欠伸軽便鉄道通信の図を毎回とても楽しみにしています。
色、形がさまざまな機関車、美しいです。

_ kouno ― 2024年10月08日 13:01

ゲージ問題、最初の決断が大きく運命を分けるので、どこまで先を見据えて選択するかが重要になってきそうですね。
国ごとに主流が違うという事は、ゲージを合わせての交流は難しいのかな、と想像します。

_ くつしたねこ ― 2024年10月10日 09:31

ゲージと車両の大きさが逆転するのは面白いですね。
にこにこ眺めている社長と共にサイズ感をすんなり理解できました。

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