欠伸軽便鉄道通信 11 ― 2023年12月03日 06:00
蒸気機関車の仕組み(連載第11回)
かつて、機関車といえば、蒸気機関車だった時代がありました。鉄道は、蒸気機関車とともに発展したといっても良いでしょう。
蒸気機関車は、石炭などを燃やして水を温め、蒸気を発生させ、その蒸気の圧力でシリンダ内のピストンを動かします。高圧の蒸気がピストンを押し、動輪と結ばれているロッドを押します(図1)。
ただ押すだけでは、半回転しか回りません。いっぱいに押したあと、今度は引きます。押したり引いたりを繰り返して、動輪を回し続けます(図2)。
その押し引きの音が、シュッシュッと聞こえます。また、ピストンを動かした蒸気は、煙突から排出されますが、この音がボッボッと聞こえます。蒸気機関車が走っていると、シュッボッシュッボッと聞こえるのは、このためです。汽笛も蒸気でポーと鳴らしますから、蒸気機関車のことを「シュッポッポ」と呼んだりするのでしょう。
ピストンがロッドを押し引きするとき、押しきったり引ききった位置では、力が出ません。そこで、シリンダとピストンをもう一つ用い、二つのピストン(2気筒)によって動輪に90度ずらして力をかけます。こうして、直線運動を回転運動に変換しているのです。
普通の蒸気機関車は2気筒で左右にシリンダがあります。右と左で、押し引きのタイミングが90度ずれるので、動輪が1回転する間に、4回シュッと音がします。
蒸気機関車の全盛期には、3気筒や4気筒の高性能機も作られました。空気抵抗を減らすために流線型の蒸気機関車も試され、時速200km以上の記録も出ました。
庭園鉄道でも、蒸気機関車は人気者です。石炭を小さなスコップで火室へ投入し、お湯が沸くのを待ちます。蒸気を作り続けるためには、石炭よりも大量の水が必要ですから、蒸気機関車は、水のタンクを備えたり、後ろに炭水車(テンダ)を引いていたりします(図3、図4)。それでも、長く走るためには途中で水を補給しなければなりません。
電気機関車は、スイッチを入れればすぐに動きますが、蒸気機関車は、準備に時間がかかります。また、走り終わったあとも、灰の掃除が大変です。そういったことも含めて楽しめるのは、今でも蒸気機関車が大好きな人が多いからでしょう。
来月は、ちょっと変わったタイプの蒸気機関車を紹介したいと思います。
図1 蒸気機関車の仕組み: 火室で火を焚き、ボイラの水を熱する。その蒸気をシリンダへ送り、ピストンを動かす。蒸気の量を加減して、パワーをコントロールする。
図2 往復運動を繰り返す仕組み: シリンダへ入る蒸気と、シリンダから出る蒸気の道筋を切り替え、ピストンが繰り返し動くようにする。
図3 蒸気機関車の主な2タイプ: 一番大事な水がどこにあるかで、タイプが分かれ、それによって呼び名が違う。テンダ(炭水車)は、別車両だが、切り離すことはない。
図4 タンク車の種類:ボイラの横にあるサイドタンクが最も多い。キャブの後ろにあるリアタンク。ボイラの上にまたがるサドルタンク。このほか、ボイラの下にあるボトムタンクなどがある。
写真1 ジャック:実機の4分の1スケールのボトムタンク。欠伸軽便17号機。
写真2 コッペル:キットで製作したテンダ機。欠伸軽便15号機。
写真3 木曽森林鉄道ボールドウィン:6分の1スケールのリアタンク。欠伸軽便27号機
写真4 木曽のボールドウィンを工作台の上で製作中の写真。
写真5 7/8インチスケールのジャック:写真1と同じ機関車の14分の1スケールで自作。45mmゲージを走る小さい機関車(燃料はガス)。
コメント
_ うみひろし ― 2023年12月03日 06:33
_ 香 ― 2023年12月03日 09:52
シュッやポッ、ボッなどの音がどの動きで聞こえるのか考えたことがなかったですが、分かりやすかったです。
_ KATO Masaya ― 2023年12月03日 13:24
4気筒は何となくイメージが出来ましたが、3気筒のイメージがなかなか難しいですw
奇数の気筒数だと、どの場所にシリンダを置くのか?どの動輪を動かすのか?はたまた2気筒のサポートなのか?といろいろ想像していますw
奇数の気筒数だと、どの場所にシリンダを置くのか?どの動輪を動かすのか?はたまた2気筒のサポートなのか?といろいろ想像していますw
_ のりG ― 2023年12月03日 21:29
ボールドウィンのブッとい煙突にはどんな秘密が隠れされているのでしょうか?。楽しみです。
_ ネム ― 2023年12月03日 22:14
こういう図を書くのは難しそうですね。
蒸気機関車は、石炭さえあれば動くものという
印象があったのですが、それと同じくらい水が
ないと動かないというところが、わたしには新たな
発見でした。
蒸気機関車は、石炭さえあれば動くものという
印象があったのですが、それと同じくらい水が
ないと動かないというところが、わたしには新たな
発見でした。
_ kouno ― 2023年12月05日 12:39
とても分かりやすい説明で、面白いです。
ベテランの方だと、押し引きの音だけで何気筒か判断できそうですね。
蒸気機関車のタンクの形は、お酒の蒸留所のタンクの形と似ているように思いました。
ベテランの方だと、押し引きの音だけで何気筒か判断できそうですね。
蒸気機関車のタンクの形は、お酒の蒸留所のタンクの形と似ているように思いました。
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図と説明を繰り返しみています。(自分の理解力が不足しているので)
蒸気機関車は、その姿と出す音が気に入っていましたが、今回の通信で
大好きになりました。写真の蒸気機関車、いずれも魅力的です。