欠伸軽便鉄道通信 42023年08月27日 05:50

線路を敷くために土地を測る(連載第4回)

 Nゲージなどの鉄道模型のレイアウト(ジオラマ)を作るときには、平らな板の上に線路を接着し、橋が欲しかったら谷や川を切り取り、トンネルが欲しかったら山を作って、線路に被せます。
 庭園鉄道は、自然の中に鉄道を通すという意味で、実物の鉄道とまったく同じ作業をします。鉄道工事までも模型化している、といえます。
 最初に、どこに線路を通すか、だいたいの候補を考えます。障害物があるような場所は避けなければなりません。次に、土地の測量をします。これは主に、高低差を測ることが目的です。
 土地の高さの測定法として、最も簡単なのは、水の入ったホースを使う方法です。ちょうど良い量の水を入れれば、ホースの両端で水面の高さが同じになるので、これを基準にします。
 水準器という道具があれば、これで水平を確認することができます。1mの長さの棒に水準器を取り付けておき、1mずつ高さの差を定規で測っていきます。10m離れた場所なら、10回測れば良いわけです。
 最近では、水準器とレーザを組み合わせた道具も安価になりました。これを使って、レーザを遠くへ照射して、同じ高さの位置を知ることができます。(図1)
 庭園鉄道の線路は、勾配を3%以内とします。長く連続する上り勾配は、できれば2%以内にしましょう。それを実現するためには、高い土地をスコップで掘り下げ、低いところは土を盛る必要があります。本物の鉄道も、このような土木工事を行って作られているのです。(図2)
 低すぎる場所には、大量の土を盛るよりも、橋を架けた方が簡単です。橋は、鉄骨か木造になります。あまり高いものは危険です。
 土地が高すぎる場合は、トンネルを掘ることになりますが、この場合は、まず切り通しの工事をして、屋根を被せてから埋め直す方が安全です。
 欠伸軽便には、橋は6箇所にあり、うち3箇所が鉄橋、3箇所が木造です。また、トンネルは一箇所だけ。これは、大きなU字溝(排水溝などに使う断面がU型のコンクリート製品)を下向きに並べて置き、あとから土を盛って山を作りました。
 通常、橋は低い土地にあり、トンネルは高い土地にあります。下っていった先が橋になり、上っていった先がトンネル。橋を過ぎたら上りになり、トンネルを出たら下りになります。これが、土地に合った自然な線路の通し方です。鉄道模型のレイアウトは、この逆(上って橋になり、下ってトンネルになる)になっていませんか?

図1(上):土地の高低差の測り方
水準器は、水を入れたホースを小型化した装置。どれも、液体が水平になる性質を利用している。地面は凸凹なので、測量はcmの単位で充分。

図2(下):盛り土と掘下げ
掘ったところの土を使って、盛り土をするので、どちらかだけにならないように考える。また、雨がたまったりしないように、水が流れる道を作っておこう。

写真1:木造橋
2年まえに開通した木造橋。高さは1m程度だが、長さは10m以上ある。高低差20mほどの渓谷がすぐ横にあるため、橋を渡るとスリル満点。
 
写真2:トンネル
内部はコンクリートのU字溝。トンネルポータルは、レンガ積み。仮支持を木で作り、レンガを積んでいき、モルタル硬化後、取り外した。人が乗って通り抜けるため、車両よりも大きめに作らなければならない。

追伸:ジェットエンジン機関車
 記念となる30号機。ラジコン飛行機用のジェットエンジンで推進。内部に乗り込んで運転する。見えないが8輪車で、全輪ブレーキを装備している。残念ながら、後ろに客車や貨車が連結できない。

コメント

_ をかへま ― 2023年08月27日 05:58

8月19日の記事「They are still there.」で僕が
「へっこんだ土地を決めて、前後に線路を延ばした」とか
コメントしていた自分を恥じたいです(笑)<笑ってますが。

_ 田中真由美 ― 2023年08月27日 06:15

面白いからトンネルや橋を作るのではなく土地のバランスを取るために作るんですね。本物の鉄道もそんな風に作られているんだと思うと感動しました。小物を置いたりいろんな列車をはしらせられるのが模型の良いところですね!

_ くつしたねこ ― 2023年08月27日 07:37

今回も挿絵と共にとてもわかりやすかったです!
高低差を測るのにホースを使うとは、なるほどと思いました。

_ うみひろし ― 2023年08月27日 07:43

科学と無縁に生きてきた文系人間が
理解できているのは10%程度。
それでも興味を持って読んでいるのが一番の不思議。
物理の授業を今みたいな熱心さで受けてみたら、、、。

_ 香 ― 2023年08月27日 08:15

「鉄道工事までも模型化」なるほど、と思いました。
イラストを拝見するとホースを利用した方法、ねじれてても大丈夫なんですね…驚きです。

_ レミング ― 2023年08月27日 08:40

「水が流れる道を作っておこう」というのが、実地体験に基づいた深い言葉に感じます。

_ わんこのやま ― 2023年08月27日 08:54

イラストで高低差の測り方がよく分かりました
金沢兼六園の日本最古の噴水が離れた池の高低差を使い自然の水圧で上がっているという説明を思い出したりです

_ KATO Masaya ― 2023年08月27日 11:47

ひとつの趣味だと思っていたものが色々なことにつながっていて、実はひとつではなく多様性に富んだものであると再認識しました~

_ ネム ― 2023年08月27日 20:19

連載で読んだ時も、今、再読した時も、
ホースに水を入れるやり方に、感心しました。
特別な道具がなくても出来るって、素晴らしい
ですね。

_ のりG ― 2023年08月27日 21:45

浜で砂を盛って、掘ると直ぐ崩れたのを思い出します。
日本中トンネルが増えてますがうまく掘れてるのかな。最近のトンネルは時々陥没したりしますね、。

_ kouno ― 2023年08月28日 12:50

どの作業も大変そうですが、トンネル周りが一番大変そうですね。
かかった時間とエネルギーを考えるだけで、頭が下がります。

_ 推しのヌッ子 ― 2023年08月28日 22:16

水の入ったホースを使った土地の高低差の測定方法や、橋とトンネルの配置についての説明は、専門的な知識がなくてもとてもよくわかりました。

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