欠伸軽便鉄道通信 92023年11月05日 06:00

第9回 プロペラで走る機関車(連載第9回)

 風の力で走るものといえば、ヨットが一番に思い浮かぶでしょう。帆を張って走る機関車は、残念ながらありません。図1のように模型ならば可能ですが、向かい風のときに進めなくなります。ヨットは斜めにジグザグに走って風上へ進みますが、線路上を走る鉄道ではこれができないからです。
 モータでプロペラを回し、風を後方へ送ることで前進する機関車は、実機でも存在しました。1930年代にドイツで作られたツェッペリン号(写真1)が最も有名で、高速鉄道の先駆けともいえるものでした。その後、ジェットエンジンを後方へ噴射する実験機も作られています。しかし、現在の高速鉄道はすべて車輪をモータで駆動する方式となりました。プロペラは大きい方が効率が高いのですが、鉄道はトンネルを通過したり、複線では対向車両も近い位置ですれ違います。また、駅では乗客の安全を確保するために、どうしても小さなプロペラにしなければならず、非効率となります。
 欠伸軽便鉄道には、以前に紹介したようにジェットエンジンで推進する30号機があります。それ以前から、プロペラで走る車両を試作しましたが、人が乗った車両を牽引するためには、かなり強力がモータかエンジンが必要であり、実用化していません。
 プロペラで走る機関車は、後方へ風を送るので、後続車両が邪魔になります。また、高速回転するプロペラが危険で、安全策を講じる必要があります。僕の友人で、5インチゲージで人が乗れるプロペラカーを作った人がいますが、扇風機のようにプロペラの周囲にネットのカバーがあります。
 プロペラ推進の弱点は、スタートのトルクが不足することです。高速でプロペラを回転させて、初めてスタートできます。また、走行中のスピードコントロールが難しいという欠点があります。模型の場合も、強力で確実なブレーキが必須です。
 写真2の5インチゲージのプロペラカーは、ラジコンで操縦する試作車です。とても速く走ることができますが、カーブ手前で充分に減速しないと転倒してしまいます。
 45mmゲージでも、プロペラかーを数台作りました(写真3、写真4)。ダイナミックな走行が楽しめますが、やはりカーブでブレーキングしないと、たちまち脱線します。
 車輪を駆動させるメカニズムよりも簡単なので、プロペラカーは自作には向いています。注意点は、できるかぎり重心を低くすることです。

図1 レールヨット:セールが左右に風で膨らむように、ブームは左右に少しだけ振れるようにする。倒れないようにウェイトが必要。

図2 プロペラカーの構成:モータの回転制御と、車輪にシューを押しつけるブレーキングをラジコンで操作する。

図3 ダクトファンカー:ラジコンのダクトファンユニットを利用すれば、鉄道のサイズに治る形状の車両を作ることができる。

写真1 ツェッペリン号の模型:実機はドイツ国鉄によって製造された。この模型はメルクリン製の1番ゲージ。

写真2 5インチのプロペラカー:お菓子のケースを利用して製作したもの。サーボモータで車輪にシューを押し付けるブレーキを装備。

写真3 45mmゲージのプロペラカー:イギリスのメーカのキット。プロペラの周囲にカバーがある。ラジコンでブレーキングする。

写真4 45mmゲージのプロペラカー2:おもちゃを改造して制作したもの。ラジコンだが、ブレーキがなく、スピードを出すことができなかった。

追伸 航空部の活動、ヘリコプタ:ラジコンの電動ヘリコプタを何機か組み立てた。ほぼ毎日庭園内でホバリングをさせている。

High and low2023年11月05日 09:56

5inch gauge fan driven car 32023年11月05日 10:05