欠伸軽便鉄道通信 62023年09月24日 05:50

乗って運転? 乗らずに運転?(連載第6回)

 庭園鉄道で機関車を走らせる場合、普通は乗用トレーラと呼ばれる車両に乗り、機関車に牽引させて運転をします。自分のすぐ前を機関車が走ります。庭園鉄道のルーツは、蒸気機関車の模型(ライブスチーム)を走らせる趣味だったからです。
 蒸気機関車は、電気機関車よりも運転が難しく、石炭を投入したり、数種のバルブを操作したりしながら運転する必要がありました。
 しかし、電気機関車の場合は、リモコンで運転ができるので、すぐ後ろに運転士がいる必要はありません。お客さんが乗るトレーラを引かせ、運転は一番後ろの車両でする場合もあります(乗客の安全確認がしやすいため)。
 人が乗れない小さい機関車(欠伸軽便では、45mmゲージと32mmゲージ)は、ラジコンで、レギュレータ(アクセル)を調節します。こうすると、カーブでは速度を落とし、上り坂では出力を増す操作ができます。
 5インチゲージの大きい機関車でも、ラジコンで走らせるものを1台だけ作りました。10年以上まえに作った10号機「カメラボーイ」がそれです(写真1)。日本では「単端」と呼ばれるレールバスをイメージし、欠伸軽便らしく、ずんぐりとしたスタイルになっています。
 カメラボーイの名称は、カメラを装備しているからです。ラジコンでカメラを上下左右に動かすことができ(写真2)、後方にもバックするときにのためにカメラがあります。カメラで撮影した映像を送信し、離れた場所からモニタで見ながら運転ができるようになっています(図1)。
 冬は氷点下15℃にもなります。そんな寒い日にカメラボーイを走らせ、暖かい室内で庭園の隅々までパトロールすることができます。ヘッドライトを点灯させ、夜間に走らせることもできます。夜は野生のキツネやイタチが歩いていたりしますから、それらの光る目を目撃することもあります。
 カメラボーイは、主にベニヤ板と角材でできています(写真3、4)。動力用、カメラ用、ライト用、通信用と沢山の電池を載せています。普段は、モニタで映像を見ていますが、ゴーグルをかけて見ることもでき、車両に乗って運転している気分が味わえます。今はまだ試していませんが、首を左右に動かすと、それを加速度計で感知し、車上のカメラが左右に向きを変えるようにできるはずです。まるで、バーチャルリアリティみたいな感じになることでしょう。
 運転する人は、どこにいてもかまいませんから、世界中からインターネットを通して、この運転体験ができるようにすることも可能です。そうすれば、あなたも欠伸軽便鉄道の運転士になれるのです。

図1:離れた場所から運転する方法
室内にいながら庭園鉄道を楽しめる。双方向に電波を送受信するので、異なる周波数を用いる。

図2:カメラの向きを変える仕組み
ラジコンのサーボ2つで、どの方向へもレンズを向けることができる。

図3:VRのような遠隔操作
首の動きを感知するセンサ付きのゴーグルで映像を見て運転する。インターネットを通じてコントロールすることも可能。世界中どこにいても欠伸軽便鉄道の運転が楽しめるようになる。

写真1:カメラボーイ
欠伸軽便鉄道10号機。ラジコンで操縦ができる機関車。小さいが人が乗った車両を牽引することもできる。

写真2:車内カメラ
サーボによって上下左右に向きを変えることができる。このほか後部にもカメラがある。 撮影した映像を送信する機器も搭載されている。

写真3:カメラボーイの内部
シャーシは木製。走行用の12Vバッテリーのほか、ラジコンのサーボが多数搭載されている。乾電池は送信機やヘッドライトのためのもの。

写真4:カメラボーイの床下
モータをチェーンで減速して動輪を駆動している。車輪を支持する軸受は既製品。