欠伸軽便鉄道通信282024年07月28日 06:00

貨車と客車について(連載第28回)

 機関車は、動力を持たない車両(非動力車)を牽引するためのものです。現在の鉄道の多くは(特に日本では)複数の車両に動力を分散配置した「電車」が一般的となりましたが、今でも、機関車が非動力の客車を何両も牽引することがありますし、貨物列車では、まだこの形式の方が多く見られます。実際の鉄道で直接仕事をするのは、人や荷物を運ぶ非動力車といっても良いでしょう。
 庭園鉄道は、機関車を運転する人が乗るトレーラが、非動力車です(人が乗る車両に動力を備える方法もありますが)。普通は、このトレーラの後ろに非動力車を複数台連結して列車を編成します。アメリカなどの大きな屋外レイアウトでは、何十両もの貨車を機関車に牽引させ、ダイナミックに走る光景をよく見かけます。
 このように非動力車を複数連結して走ると、音、つまり走行音が心地良く響き、機関車を運転するとき、後続の列車の実感的な走行音を楽しめます。レールのつなぎ目では、ゴトンゴトンという連続音が続きます。
 もちろん、列車の走行を眺めるのも楽しみの一つです。カーブなどで後ろを振り返ると、長い編成が線路に沿い、連なって走る様子を見ることができます。動画を撮影する場合にも、長編成ほど迫力があるでしょう。
 欠伸軽便鉄道では、客車は、ボディを取り外すと実際に人が座れるシートが現れ、乗用トレーラとして使用できるように作りました(写真1)。また、貨車の場合も、できるだけなにか実際の役に立つように工夫しています(図1)。
 たとえば、タンク車(写真2)には、蒸気機関車に必要な水を入れ、パイプでつなげて機関車に給水しています。無蓋車は、人や犬が乗れるようにしたり、重量物を運んだりできる強度にしてあります(写真3)。運材車は、ストーブの薪を運びます。ナベトロと呼ばれる貨車は、土や砂利を運び、線路工事のときに活躍します(写真4)。
 列車の最後尾には、カブースと呼ばれる車掌車を連結し、車掌の代わりに人形を乗せたり、ホィッスルやエンジン音などを発する電子サウンドとスピーカを組み込んだりしています(写真5)。
 非動力車は、動力車に比べると軽量なので、簡単に持ち上げることができ、編成を変えるときには便利です。ただ、あまり軽いと、カーブでの横方向力や、減速時の圧縮力で脱線する可能性が増します。連結する数が増えるほど脱線の確率が高くなるので、注意が必要でしょう。


写真1 客車: ボディを外すと、トレーラのシートが現れる。人間が2人乗ることができる。

写真2 タンク車: 実際に水を入れて運ぶことができる。蒸気機関車への給水や、コンクリート工事で利用できる。

写真3 無蓋車: 屋根のないオープンな貨車。この車両は、人間が2人乗れるトレーラになる。

写真4 ナベトロ: 土や砂利を運ぶ貨車。容器をサイドに傾けて、運搬物を下ろすことができる。実際に、土木工事で活躍する。

写真5 カブース: 列車の最後尾に連結し、車掌が乗る車両。実機ではブレーキなどを備えていた。前方が見えるように屋根の上にキューポラがあるアメリカのタイプ。イギリスでは、サイドに出窓があるタイプが一般的。


図1 いろいろな非動力車: 客車と貨車に大別される。欠伸軽便鉄道では、客車はすべて人間が乗れるトレーラになっている。貨車は、実際の機能を持たせ、強度などを考えて製作している。シャーシは鉄または木材、ボディは木材やボール紙で作ることが多い。