欠伸軽便鉄道通信182024年03月10日 06:00

人力機関車(連載第18回)

 蒸気機関が発明される以前には、馬や人間が鉄道車両の動力でした。道路を走る馬車より走行抵抗が小さいため、馬1頭でも、大勢が乗った客車を引くことができました。また鉱山や工場では、人間が(トロッコ)貨車を押して荷物を運んでいました。
 蒸気機関や内燃機関が実用化され、「機関車」と呼ばれる車両が登場してからも、自転車のようにペダルをこいで走る人力車両が、視察や点検作業などのために用いられています。ペダルではなく、腕を使ってこぐ形態のハンドカーもあります。
 庭園鉄道でも、人力で走る車両を作って楽しんでいる人が世界中にいます。イギリスでは、外見が蒸気機関車そっくりで、煙突から煙も出るのに、実は運転士が足でペダルを漕いで走る機関車を作った人がいます。これは個人の庭園内で走る趣味の機関車でした。
 欠伸軽便鉄道にも、1機だけ人力機関車(31号機)があります。不要になった自転車を解体し、ペダルと後輪軸の機構を利用して作ったものです。後輪の軸に、新たにスプロケット(チェーンと噛み合うギア)を取り付け、そこから動輪軸にやはりチェーンで伝動しました。変速用の5枚のスプロケットも自転車のものをそのまま利用し、ギア比を変えることが可能です。
 重心を下げるため、仰向けに寝るような姿勢でシートに座り、前部のペダルを足でこいで走ります。運転には、ブレーキが必要です。動輪径は10cmで、自転車の後輪よりもずっと小さいため、軽くこぐことができます。最も重い(高速の)ギアで、上り勾配を軽く走ることができます。ただし、人が乗った客車を引いてスタートするときだけは、ギアを変えた方が楽です。
 欠伸軽便は、最高の勾配が3%ですし、線路は走行抵抗が非常に小さいので、とても滑らかに走ります。森林の中を一周しても、それほど疲れません。非常に快適なサイクリングです。
 意外なことに、ゲストにも人気があります。電気機関車のようにスイッチもなく、自転車と同じ感覚で運転できる点が馴染みやすいからでしょう。バックはできませんが、この車両は軽量なので、簡単に持ち上げて、どこでも逆向きにすることができます。
 動輪軸の回転数を磁気センサで検知して、スピードや走行距離なども表示できます。当初は、ボディを作って、メカニズムが見えないように被せる計画だったのですが、風を切って走る爽快さも捨て難く、しばらくこのままになりそうです。


写真1、2 人力機関車31号機: 自転車の一部を利用して作った人力機関車。シートは椅子のパーツを使用。

写真3 5インチゲージの人力機関車: 4人の人形が忙しく動いて走る。モータとバッテリィで駆動。

写真4 32mmゲージの人力機関車: 2人の人形が動く、ゼンマイ駆動のブリキのおもちゃ。

 追伸 航空部の活動: 最近飛行したプー・ド・シェルとフォード・フライバのスケールモデル(いずれもラジコン電動機)

図1 人力機関車(欠伸軽便31号機): 重心位置の設定が重要(なるべく低く、また動輪2軸の中心に来るように)。ブレーキは不可欠な装備。ギアの変速はほとんど使わない。
図2 蒸気機関車に似せた人力機関車: イギリスのコールビルにある個人の庭園鉄道(18インチゲージ)で走る2分の1スケールモデル。
図3 実物の鉄道で活躍する人力機関車:人が押す「人車」、手でこぐ「ハンドカー」、自転車と同じ機構のレールサイクル。

Human power locomotive2024年03月10日 06:04