欠伸軽便鉄道通信 32023年08月13日 05:50

線路と車輪の秘密(連載第3回)

 鉄道の線路(軌道)は、2本のレールを平行に置き、これを枕木に固定したものです。線路はその場所に置いてあるだけで、地面に接着されているわけではありません(例外はあります)。周辺にはバラストと呼ばれる砂利が敷かれていて、これによって線路の位置や高さを微調整できるようになっています。
 ところで、どうして線路なのでしょうか?
 鉄道は、車両が線路に沿って走るようにする仕組みです。最初に鉄道を考えた人たちは、どうしてレールの上に車輪をのせようとしたのでしょうか? たとえば、レールではなく2列の溝にして、そこに左右の車輪がはまり込んで進む方法もあったはずです(プラレールなどのおもちゃがこれですね)。
 どうして、この溝方式が採用されず、レールの上に車輪がのるようになったのか?
 庭園鉄道を毎日走らせるためには、線路上に異物がない状態に保つことが大切です。森の中ですから、枯枝が落ちて線路に乗ってしまうことは日常茶飯事です。でも、ほとんどの場合、車両が走ることで、小さな異物はレールから落ちます。これが溝だったら、小石などがはまり込んで、脱線につながるかもしれません。
 溝方式よりもレール方式が優れているのは、このような障害の可能性が低いからです。

 レールから車輪が落ちることを脱線といいます。脱線しないために、鉄道車両の車輪にはフランジという出っ張りがあります。車輪の内側にあるフランジのおかげで、線路に沿って車両は走ることができます。
 また、車輪とレールが当たる面も、僅かに傾いています。外側ほど車輪径が小さくなっています。どうして平らにしないのでしょうか?
 図のように、鉛筆を段差のある場所に斜めに置き、転がしてみて下さい。六角ではなく丸い鉛筆が良いでしょう。鉛筆は簡単には段から落ちません。鉛筆の先がテーパ(円錐形)になっているからです。落ちかけると、接している部分の直径が小さくなり、鉛筆は真っ直ぐではなくカーブを描いて転がります。このため、回り込んで段から落ちない方向へ進路を変えるのです。
 鉄道の車輪もテーパになっています。フランジにもこれと同じ効果があります。脱線しそうになった場合、車輪のフランジ部がレールに乗り上げ、見かけ上大きな直径となって、逆の方向へカーブしようとするため、元に戻る効果があるのです。

図1(左上):車輪とレール
この図では、わかりやすくするためフランジを大きく描いている。実際のフランジはもっと小さい。テーパの角度も実際は僅か。

図2(上中):何故フランジは内側にあるのか
フランジが内側にある方が脱線しにくい。脱線時には、両側の車輪がレールから落ちる。ニュースでは「左の車輪が脱線した」などと報道されていることがあるが、レールが移動しないかぎり、車輪が片側だけ落ちることはない。

図3(下左)鉛筆実験1
円錐形は、先端ほど円の直径が小さくなる。大きい直径と小さい直径の円が同じ回転をすれば、大きい方が進みが速くなり、カーブを描いて進む。このため、段差から鉛筆が落ちない。

図4(下右):鉛筆実験2
両端を削った鉛筆を用いる。ボール紙でカーブしたコースを作り、脱線せずに転がる様子を確かめてみよう。動力をつければ、もっと長いコースも走れるはずだ。

写真1:昨年作ったターンテーブルの写真
機関車は重くて持ち上がらないので、向きを変えるためにターンテーブルを作った。回転させるのは手動。車両が乗るテーブル部は、キャスタ(車輪)で支えられています。
 
写真2:昨年の夏休みの様子
このように森が緑で生い茂るのは6月くらいから。